ティファニーは歴史的に最も古く北米で最大のパテック フィリップの小売業者であるはずだが、5番街のサロンは通常、全米の他の小売業者への割り当て分がすでに到着したあと、最後に時計の出荷を受けるということは意外かもしれない。なぜか? サインがあるからだ! 2011年の夏の終わりに、ようやく新しい時計の出荷を受けることができた。同僚と私は、ティファニーのサインを持つ新品のノーチラス 5711を購入することに興味があるかどうか顧客リスト全体を調べていたが、「いやいや、私はいらない」あるいは「ほかの場所で手に入れた」と言う声ばかりだった。
パテックフィリップ ティファニーブルー 「ノーチラス」Ref.5711/1A-018
自動巻き(Cal.26-330 SC)
30石
2万8800振動/時
パワーリザーブ約45時間
SSケース(直径40mm)
120m防水
ちょうどその頃「うまくいけば、これはついにパテックを所有するチャンスかもしれない 」と思い始めた。しかし、それでも私はそれ以上踏み込むことをためらいそうになった。何しろ、移民の子であるヒスパニック系の若者にとって、時計に使うには大金だったのだ。馬鹿な決断をしたと思うことになるかも知れない恐れはあったが、一生に一度の、一生大事に思えるチャンスかも知れなかった。自分のレガシー(遺産)のようなものだと。それに、ティファニーのサイン入りはともかく、ノーチラスを後から手に入れるのは難しいだろうとも思ったのだ
だからチャンスをつかんだ。一部は現金で支払い、アメックスも使った。ティファニーのクレジットカードも作り、一部そこから払った。そして、従業員割引を受けたと言ったら信じてもらえるだろうか? そうなのだ。
2011年9月26日、忘れもしないあの日。五番街の奥まった部屋で、袋と箱から時計を取り出し、自分でブレスレットのサイズを測ったのを覚えている。まるで第一子が誕生した日の誇らしい父親のような気分だった。時計に5ケタドルも出すなんて、今でも大きなことだし、初めてだった。しかし、私はそれを実行した。
その時、おそらく全世界でティファニーのサインが入った5711をつけている28歳の裕福でないヒスパニック系の人間は私ひとりだろうと思ったのを覚えている。とても誇らしかったが、これで終わったわけではなかった。もう一歩踏み込みたかったのだ。毎日どこにいても、何をしていても、この時計を身につけることにした。そしてこれが、私の友人たちが「#TheLovedPatek」と呼ぶものの始まりとなったのだ。
私は5711を、トマトファイトにも、ロッククライミングに、崖から飛び降りるときに身につけた。世界一周の旅にも同行した。泳いだり、カヤックをしたりするときも手首につけていた。そして、コンサートやレイブでのモッシュピットでも活躍した。7年以上ものあいだ、この時計は私が毎日身につける2本の時計のうちの1本だった。
【関連記事】:2022年注目のバッグをご紹介しました。